● 大正野球娘。への想いを語らナイト 緊急レポート!
大正野球娘。への想いを語らナイト~新宿八景紳士戯~ レポートその1
文/格闘司書
●プロローグ
2010年、4月7日(水)新宿ロフトプラスワンにて、アニメ「大正野球娘。」のトークイベントが行われた。4月だというのに肌寒く、雨が降っていた。しかも平日ということもあり、客席は埋まるのかどうか、少しの不安を抱えて私は会場に入った。
するとお客さんの長い列にまぎれて「出演者なのですが」と受付にて身分を説明している、まるい眼鏡をかけたヒゲのおじさんがいた。池端監督である。私は思わず笑いしながら「お久しぶりです」と挨拶をした。池端監督と会うのは池袋のイベント以来だった。
監督と一緒に楽屋へ顔を出すと、出演者のTBSのP村上さん、脚本担当の天河さんはすでにそわそわしていた。開演まで一時間はあるのだけど、すでに緊張している模様。そんな空気に感染されたのか池端監督もそわそわし始める。そんな出演者の三人を横目にリラックスムードの私とポニーキャニオンの中村さん。出演予定がないので気楽である。しかし面々にお会いするのは約半年ぶりなので、同窓会にでも来たような気分で今日のトーク内容についてのことを5人で話していた。
すると会場スタッフの方が「村上さん宛てにバイク便が届きました」と教えてくれた。何が届いたのだろうか? 天河さんと私で「金属バットだ。開発したばかりの」と子供のようにひやかす。中身はCDとのこと。今日のイベントで使うBGM用のCDを忘れたそうだ。どんまいです!
開演前に楽屋で先に乾杯をしてから少しして、中村さんが近くのコンビニまで買い物に行く、と言って楽屋を出た。私は中村さんが何を買いに行ったのか聞かなかった。雨に濡れてレジ袋を片手に戻ってきた。袋を覗くと一枚のタオル。それを取り出し「あー落ち着く」と言いながら目を細め、自分の肩にタオルをかける池端監督。そう、池端監督の肩にあるはずのタオルがなかったのだ。さすが仕事の出来る男は気がつくところがちがう、と少し大げさに感嘆してみた。
いつかJ.C.STAFFのP松倉さんに、何で池端さんはいつもタオルを肩にかけているのか聞いたことがあった。「あれは体の一部なんだよ」と真顔で説明してくれたのを思い出した。
それぞれがそれぞれに、浮き足立つ中いよいよ開演した。
●第一幕
特別メニューとして、小梅キュー(梅キュウ)小梅酒ソーダー、桜花会フィズ、大正野球丼(焼きうどん)などが用意された(野球丼は開演前に完売)。
拍手を受けながらTBS村上さん入場。
TBS村上(以下、村):「みなさま、ごきげんよう」
会場:(笑)
村:「本日は大正野球娘。新宿八景紳士と、淑女の戯(たわむれ)にご来場いただき誠にありがとうございます。今宵はテレビアニメ「大正野球娘。」についてあることないことをダラダラ語り合いますので、今日はホントに好きな人が来ていると信じきって喋りますので!(笑)どうぞよろしくお願いします」
会場:(拍手)
村:「(公式サイトで)編集後記とか書いていたのは僕なんですよ。インターネットでの書き込みなんかもいろいろ見させていただいていたので、(編集後記を)見てくれている人がいるのだと(笑)大変励みになっておりました。みなさん本当に愛が深いなぁと(笑)。放送も終わって、もう半年も経ち、DVDも全巻発売しきったのに、何で今更イベント? とお思いかもしれませんが、実は僕がひとりで監督とかに「まだすごく愛してくれてるファンがいるので、新宿でトークイベントやりませんか?」と声をかけましたところ他の出演者一同も喜んでくれて、今日、イベント開催の運びになりました」
村:「あと、始める前に今日集まったお客さんは「娘。」も好きだけど「野球」も好きだと思って語らせていただきます。巨人の木村拓也コーチ、まだ若く、コーチとしてのこれからが期待されたのですが、大変残念なことに本日ご逝去されたということで、ご冥福をお祈りしたいと思います」
村:「では、大正野球娘。新宿八景紳士戯、始めさせていただきます。まずは鉄人のように働いていた「娘。」たちの全てを知る男、池端隆史監督です!」
会場:(拍手)
―― 池端監督、ビールジョッキを持ちながら、肩にはタオル、お客さんからもらった差し入れを片手に、という温泉からあがってお土産を買った人のような風貌で登場。
※お客さんからの差し入れが相当うれしかった模様。
池端(以下、池):「みなさん、こんばんは! 今日は集まってくれてありがとうございます。えっとね、みなさん右と左を眺めてください」
会場:(それぞれ左右を見渡す)
池:「みんな同志です(笑)。楽しんで行ってください!」
会場:(笑)
村:「で、このテーブルにはもう一本マイクがあるのでゲストがくるだろうな、というのはご存知だとは思いますが、それが誰かっていうのは発表してませんでした。続いてのゲストです。脚本を担当した天河信彦さん! どうぞー」
会場:(拍手)
―― 天河さん入場。座ってから池端監督と固く握手。
天河(以下、天):「えーっと。喋っていいですか? 出落ち担当の天河です(笑)」
天:「なかなかこうところに来る機会がなかったんですけど、今日はこうやって沢山のファンの方に会えて、すっごく嬉しいです。一緒に楽しみましょう! ということで、ビール注文していいですか?(笑)」
村:「とりあえず乾杯しましょうか」
池:「いやー、集まったねぇ。ガラガラだったらどうしようかと思った(笑)」
村:「いや、ほんと。雨も降ってるし」
天:「でもね。アレですよ。まさかゲストで俺が来るなんて思ってなかった人が非常に多かったと思うんですけど(笑)」
村:「ゲストこいつかよ、って空気になったら一身で受け止めてくださいと(笑)お願いしておきました」
―― ビールが来て、三人ビールジョッキを持つ。
池:「えー、本日はお日柄もよく(笑)お足元も悪い中お集まりいただき、ありがとうございます。では、乾杯!」
会場:「かんぱーい!」(拍手)
池端:「あ、そうだ。お客さんから差し入れいただきましたー。生まれて初めてプレゼントをいただきました(笑)。ありがとうございます」
村:「で、さっそくなんですが。今日お越しいただいてるお客さんは「娘。」たち全員を好きだと思うのですが、特に誰が一番好きかお聞きしたいなぁと思います」
池:「お、いいねぇ」
村:「まずは小梅が好きって人」
村:「あー、やっぱりね。主人公だし」
村:「では、晶子さんが好きって人」
会場:(笑)
池:「すくねーな(笑)」
村:「大正野球娘。占いで言うと、晶子さんが好きっていうのはMですからね(笑)」
会場:(笑)
村:「続きまして、鏡子が好きって人」
村:「あっ! 少しいる!(笑)」
池:「貴重だ(笑)」
村:「では一番人気かもしれない、胡蝶が好きって人」
村:「あ、そうでもない。小梅のほうが多い」
池:「お、お。まぁまぁじゃないですか?」
村:「では、乃枝が好きな人」
会場:(笑)
村&池:「あ、いた!!(笑)」
村:「嬉しい! かなり思い入れありますからね。乃枝には」
村:「では、巴が好きな人!」
池:「いるなー。バカな子が好きなのかなぁ?(笑)」
村:「原作では完璧超人なのに、なぜかこの人(池端監督を指さし)の手にかかるとおバカになってしまった(笑)」
池:「ごめんなさい(笑)」
村:「では、ショートのたまちゃん」
村&池&天:「おおー」
村:「いるなぁー。では、セカンドのお雪」
天:(一番最初に手を上げたお客さんを指さして)「早い!(笑)」
池:「愛を感じるね(笑)」
村:「では、静が好きな人」
村&池&天:「おおー」
村:「じゃあ、この中に「旦那」がいるな?(笑)」
会場:(爆笑)
村:「では、最後の質問。野球も好きだけどサーフィンも好きっていう人!(笑)」
会場:(爆笑)
村:「さすがにいないか(笑)。今湘南あたりにいるんでしょうねー(笑)。主人公が一番人気っていうのは大変嬉しいです。ありがとうございました!」
村:「では、このアニメを企画したきっかけを振り返りたいと思います。まず、深夜アニメなんで女の子がたくさん出るアニメがいいな、と。でもミラクルが起こるものじゃなくて、汗と涙と感動でキラキラ輝く女の子たちを描きたいんです、とJCさんと話してて原作の「大正野球娘。」を見つけたんです。原作者の神楽坂さんから「好きにしていいですよー」とのことでOKいただきまして、すこし熱い青春ものとして、野球をしっかりやろう、とうことで製作を開始しました」
村:「(池端さんに向かって)企画内容聞かされて第一印象どうでした?」
池:「まず、JCの松倉さんというプロデューサーから原作の1巻を渡されました。とりあえず読め、と。で、桜花会結成して練習試合したところで終わってるんだけど、これ1クールでやりたいんよね。って言われて。おしりどうするの?って聞いたら、「まぁ、考えてくれや」って言われて(笑)」
村:「一番最初に決めたのは、男子と勝負して勝つ? 負ける? っていうことろから決めたんですよ。プレイボールで終わるのだけはやめようっていうのはありました。試合はきっちり描きたいなと思っていました」
池:「一番最初、勝たせようって話もあったんだよね」
天:「監督と村上さんと喫茶店で打ち合わせしてて、池端監督が「勝たせよう」って言ってからトイレ行って席外したとき、俺と村上さんと二人で「それはないですよね~」って言ってました(笑)。今だから言うけど」
池:「俺もずいぶん悩んだけどねー。惜敗が一番いいんじゃないかと思った」
天:「一番最初にもらったシリーズ構成(全話通して物語の展開をある程度決めること)案の最後の部分なんですけど(紙をかざす)「さて、勝敗はいかに!?」で終わってるんですよね(笑)」
会場:(爆笑)
天:「どんだけ投げっぱなしなんだ!?(笑)」
池:「なんて書いてあるかというと……(紙を読みあげる)『桜花会1点リードでむかえた最終回、二死満塁。バッターは因縁の相手、岩崎荘介。小梅、晶子のバッテリーの配球は? さて勝敗はいかに?』(笑)」
池:「……あれだよ。『オラに力を分けてくれ』っていう(笑)。みんなで決めようよーってことだよ」
村:「(笑)まぁ、そんな感じで、ラストだけは最初に決まってたわけですよ。で、じゃあ試合までどうやって繋いでいったらいいかなっていう作業に入りました。その作業をしていく中で、ひとまず野球の話はおいといて、全体的な時代考証についてお伺いしたいな、と思います。オーディオコメンタリーでもあったように監督は野球よりも大正時代にはまったっていうのがありましたよね(笑)」
池:「まずね、大正時代って全く分からなかったんですよね。自分が生まれる34年前の話をやるわけだ。で、周りにその時代の人もいなし、とにかく調べまくるしかなかったね。あと足でも調べた。資料関係の一部は天河さんにお願いして、図書館だとかで調べてもらいました。自分はまず、麻布の古い地図を見つけてきて、だいたいこの辺が小梅の家なんだろうな~など想定して舞台になるところは全部を歩きました。でも、大正って感覚が分かんなかった。ネットで調べたら大正村っていうのが岐阜県にありましてのがありまして、自腹で一泊してきたんです」
村:「え、領収書もらわなかったんですか? ありゃりゃ~。えらいなー(笑)」
池:「で、大正村って言っても遊園地みたいに一箇所に固まっているわけではなくて、街全体的に散らばっているのね。建物とか。で、半日かけてだらだら歩きました。民家も見れたんで、電話のある位置だとか見ましたね」
村:「あと、衣装とかも検討したとき。衣装や小物もきちんと時代背景を忠実に再現したい、ということだったんですけど、でもアニメですからね。いろいろ揉めたけど、スカート丈は一番揉めましたよね」
池:「揉めたねー。松倉は短くしろって言ってて、俺は長くしようって言ってたし(笑)」
村:「でも、実際はけっこう膝上なんですよね?」
池:「そうそう。ぶっちゃけると、実際あの時代のスカートは膝上だったんだけど、ただ、素足じゃないんだよね(笑)。昭和の初期(戦前くらい)のほうがスカート長くなって、素足なんだよ」
村:「あと、大正時代だから「アウト」とか「セーフ」とか言わないでしょとかの話にもなりましたよね」
池:「そうそう。でも調べたら意外と英語のほうが多い」
村:「ちょうど西洋の文化を取り入れようと力を入れていた時代だったので、英語教育にも力入れてたらしいんですよね」
池:「で、いろいろ調べたらたら、五話で「よーい、ドン」の代わりに「on your mark!」って英語で言ってるってあって」
村:「いろいろ調べていくと、意外と現在の女子校描くのとそんなに変わらないじゃんってなりましたもんね」
池:「ただ、学校内で何を履いているのか、だけは分からなかったですね」
天:「いろいろ調べましたね。先生はスリッパを履いているっていうのだけは分かったんですけど」
池:「生徒は、上履きってものがあったのかはちょっと分かんなかったけど、ごまかして上履きを履かせちゃいました。一番悩んだのは袴にブーツの子たち」
村:「ああ~」
池:「ブーツを脱いで、何を履いているんだ? と。そこも「分かんない」っていう前提の嘘で室内用の靴を履かせています」
村:「わりと学園生活とか街の風景とか、現代とそんなに変わらないんですよ。だから、いきなり出てくる「なっと、なっとう~」(納豆屋)ってのを入れたんですよね」
池:「戦後間もないころ、私のおじさんが納豆屋のアルバイトをしていました。だから本当は納豆屋は(昭和初期~)戦後あたりなんだよね」
村:「アフレコのときに、納豆屋の演技指導で、(納豆屋経験者)呼んでましたよねー」
池:「一応ウラを取ろうと思って(笑)。あと、明治・大正・昭和の『売り声』のCDを見つけました」
天:「でも使ったのは納豆屋ばっかりでしたよね(笑)」
池:「だって、あいつおもしろいじゃん~」
村:「あ、「夕刊は一銭」もあったはず」
天:「俺せっかく全部違うので書いたのに、全部納豆屋になっちゃってた(笑)。でもあの納豆屋さんの声優さん、EDクレジットみたら「納豆屋」って本当にそのまま書いてありましたよね(笑)」
池:「そうだね(笑)」
天:「打ち上げでね、その納豆屋さん役の声優さんも来たんですけど、他の声優さんだったら、例えば「鈴川小梅役の伊藤かな恵です」っていう風に言うのにその人は「納豆屋の○○です」って自己紹介されてて、なんとなーく切なくなっちゃってて(笑)」
池:「まぁ、(物語の展開上)大正らしい所に行かないから、そういう小ネタを入れて(大正時代)らしさが出ればいいかなとは思った」
村:「大正時代らしいところに行かないからと、オープニングで大正時代らしいものを詰め込んだあの90秒(第一話のオープニングの東京節)!(笑)」
池:「全12話の中の約80%の大正があそこに入っているんだよ(笑)」
天:「その80%で切っちゃった人がいるっていうのはすごいですよね(笑)」
村:「スターウォーズみたいな年表が、もう(笑)。無理矢理「これ大正時代のお話ですよ」みたいな、強引!(笑)」
池:「おっかなびっくり、あの某巨大ちゃんねるを見たんだけど(笑)「何だ、あの歌?」ってあって「知らねーのかよ!」って思っちゃってさー(笑)」
天:「知らないでしょー(笑)」
池:「最初、脚本であれ書いたとき、嫌ーな顔した人(スタッフの中で)いただろうね(笑)」
村:「いや、良いと思ったんだけど2コーラス行くことないでしょ、とは思いました(笑)」
池:「あれは、1コーラスだと、「アレ何?」で、終わっちゃうでしょ? 2コーラスあったらあきれてくれるでしょ(笑)」
天:「だから、そこで切られちゃったんですよ(笑)」
池:「そこで切るヤツとは縁がなかったんだよ(笑)」
天:(お客さんのほうを見て)「実はあそこ(東京節)で一回切って、DVDとかで見直して戻って来たっていう人はいます?」
池:「いない?」
天:「あっ! いた(笑)」
お客さん:「全部録画はしてて、一回見てやめたんですけど(笑)」
池:「やめてんのかよ!(笑)」
お客さん:「でもBD全巻買いました」
村&池&天:「ありがとうございます!」(拍手)
―― 会場からも拍手
村:「録画もいいですけど、やっぱり放送も見てくださいね(笑)」
池:「大正野球娘。って視聴率どうだったの?」
村:「深夜のアニメとしては、悪くなかったですよ。それにこの番組は、若者だけでなくわりと年齢が高い人も観てくださっていたんですよ」
池:「そうそう、何かで見てたら「うちのオカンに大ウケ」とかあった(笑)」
村:「読売新聞の(50歳の男性からの)投書ほんとにびっくりした。「娘に勧められて見た」ってあって「えー!? 息子じゃないのかよ!」って(笑)。でも女の子にもうけるっていうのは本当に嬉しいですね」
池:「なんか、アウトコース低めにねらったのに、インコースの低めに決まった、みたいな(笑)。不思議なところに決まった気がする。たぶん(村上さんが)想定していたゾーンとは若干違うんじゃないの?」
村:「うーん……。まぁそういう結果(年齢層高め)になるんじゃないかなぁっていうのはありました」
池:「うん、うん」
村:「そう、あとサブタイトル。一話と最終回は原作からとったけど、それ以外は監督が考えたんですよね。良い古典ないかなぁ~って、えらい苦労しながら(笑)」
池:「早くシナリオ書けー、コンテ描けー、チェックしろー、っていろいろ言われてて、睡眠時間を削ってやってる中、6時間くらいかけて(サブタイの)ネタ探すんだ。で、決めたのが『麻布八景娘戯』とかね。苦し紛れってわかるでしょ(笑)」
村:「いや、その前のが苦しまぎれな感じがしました(笑)。辻討ち回の仮タイトル(『毎夜、帝都麻布をまわって辻打ちをしける程に』)とか(笑)。でも、仮でつけたタイトルはほとんどギリギリに変更になってたのに、四話の『これから』は(夏目漱石の『それから』から取った)は変わらなかったですよね」
池:「最初に『これから』って脚本会議のときにだしたら「ふざけんな」と(笑)。だって『これから』は『これから』じゃんねー(笑)」
村:「でもよく探してきましたよね」
池:「本当はあの時代(大正14年)前のものから見つけられたらいいなーって思ってたんだけど、3話くらいからはどうでもよくなった(笑)。最終的には落語にまで手をだしたし」
村:「すごい時間かけて、悩んでましたよねー。自分で自分を追い込んでたとしか思えなかった(笑)。「胡蝶、走る!」とかにしとけば、あんなに苦しまなくて済んだのに(笑)」
池:「『辻打ちでござる!』とかね(笑)」
村:「あと、6話は「俺がシナリオを書く!」って言っちゃって(笑)」
池:「6話は初めてまともに野球やる回だったから「俺がシナリオ書きてぇ!」って思ってたんだけど、1話のコンテに入らにゃいかんってなってね。結局それどころじゃなくなっちゃって」
村:「で、今何やってんですか?って聞いたら、サブタイ考えてるって(笑)」
池:「結局、白石に(脚本)お願いして、コンテのチェックの段階で野球のシーンは煮詰めていったんだよね。でも、本当は一番野球が好きなのはこの人です。(と、言って村上さんの肩をたたく)経験者だもんね!」
村:「そりゃ、(野球が)好きだから企画したんですけど(笑)、でも野球なんて誰でもやるでしょ? 太郎くんと一緒ですよ。「のび太、野球やろうぜ」っていう時代の人間ですからね(笑)」
池:「『ドラえもん』でサッカーはやらないもんね(笑)」
村:「でもまぁ、野球をやるには最低9人集めないといけないわけですよ。バッテリーは当然フューチャーされるわけじゃないですか。あと4番バッター、と作戦参謀。だから晶子と小梅、巴と乃枝はキャラクターが固まってた。だけど、他のキャラはどうするよって少し悩みましたけど、でも野球って、ポジションにキャラの性格を当てはめられるからそんなに苦労はしなかったですよね」
村:「そういえば、野球選手のモデルってどう決めたんですか? 巴は張本選手だったりとか(笑)」
村:「そう! 巴は最初右(打ち)だったんですよ。キャラクターデザインも出来上がって、コミケとかでポスターも貼って、バーンと公表して、中身作っているときに池端監督が「巴をさぁ……左にしたいんだよね」って言いだして。えっ!? 出てますけど!!(笑)」
天:「金属バット持ってね(笑)」
池:「ごめん。それ、俺の趣味!!」
池:「巴のモデルを張本選手にしたのは、特徴のあるバッティングをする人っていうことで。打率のバッティングもできるし、はまれば一発出るっていうところが、さ」
村:「そう言われれば確かに。そうかも」
池:「だっていきなり一本足、とかやりだしたらどうよ?(笑)」
村:「それはないですね」
天:「案としては出ましたけどね」
村:「コンコン打ってて、静に「姉さん、そんなバッティングでどうなのよ?」って言われて、いきなり何故か一本足になって打っちゃうとか(笑)」
天:「『何故か』じゃだめなんですよね」
村:「そうなんですよ」
池:「もし一本足やるなら、何でそうなったのかっていう経緯を入れなきゃいけないけど、いまさら入らないってなって、結局おジャンになったわけだけども(笑)」
天:「それでやらなきゃいけないこと、どんどん後ろのほうにずれていってるんだから(笑)」
村:「高津選手と古田選手がどうして、小梅と晶子のモデルになったんですか?」
池:「最初に小梅のモデルとして古田選手の映像資料を探したの。そしたら高津選手とバッテリー組んでいるのが多くて。でも高津選手って球もそんなに速くないし、打ち取ってアウト取っていく投手だから「あ、ちょうどいいや」と思って」
村:「ああ~。あと、奇をてらうのであれば、横手投げ(アンダースロー)だよねっていうのもありましたよね」
池:「本当は(阪急ブレーブスの)足立(光宏)選手とかが理想だったんだけど、さすがに資料(映像)が残ってなかったのよ。で、野球のシーンの作画をお願いするときに資料がないといけないので、そういう理由でも高津選手にしました。あと、巴さぁ最初ポジションどうする?ってなったとき」
村:「巴のサードはわりと早い段階で決まってたと思いますよ」
池:「サードはボールが来たら反射的にとればいいし、余計なこと考えなくて済むから頭悪くても大丈夫だよって(笑)。そういう理由で決めてたよね」
村:「でも、強打者と言えばファーストかサードか、ってなるんですけど、実はファーストは送球も取らなくちゃいけないので一番忙しい、と。実は頭もよくて、運動神経よくないといけないから静にしようってなったんですよね」
池:「静はねー、本当はもっと活躍するはずだったのよ(笑)!最終回でねー、多分どっかでヒット1本打ってるから!」
村:「そう、描かれていない部分で静は打ってます」
天:(お客さんに向かって)「なんか計算したら矛盾があるとか突っ込まないでないでくださいね(笑)」
村:「いや、打っててもおかしくない」
池:「たぶん、カメラが『すず川』に行ってて、(三郎が、小梅の父に)「旦那さん、応援しに行ったほうがいいんじゃないですか?」とか言ってるシーンのときに、(静が)カキーンって。(笑)」
村:「それで、次の小梅か晶子がゲッツーになってれば人数的にはあってる、みたいな(笑)」
天:(お客さんに向けて)「なんか適当に作ってるみたいに聞こえますけど、一応ちゃんと試合作ってるんですよ」
村:「そう。浅香戦のスコアブックっていうのがウラにあったんですよ」
天:「打席がどうとか、作ってあるんですよ」(お客さんに紙を掲げる)
池:(紙を奪いテーブルにのせて眺めながら)「あ~、やっぱり鏡子と乃枝は(塁に)出てないねー」
天:「やっぱり胡蝶は出塁率が高いですよね」
池:「静はねぇ……×、×、×……。あ、打ってねぇや(笑)」
天:「この段階ではね!? これ決定稿じゃないですから!」
村:「そうそう。スコアのため方とかけっこう変わってるから。本当はあんなに大量得点する予定もなかったしね」
池:「なかったー!」
天:「でもねー、巴に満塁ホームラン打たせるの結構大変だったんですよ(笑)」
村:「まぁ、その辺の話は後にとっておきましょう(笑)。あ、そうだ。ひとつだけ。巴のキャスティングで、巴役に甲斐田さんっていうのはすっごいこだわってましたよね」
池:「うん、こだわったー。他のアニメでは凛々しいお姉さん、みたいな役が多いけど、俺のアニメじゃバカばっかりやってんの(笑)」
天:「ひょっとして、巴のキャラって甲斐田さんに引きずられたところもあるんですか?」
池:「半分くらいは(笑)。想定通りな部分が半分あって、「あ、やっぱそっち行っちゃうのね」って残りがズルズルって行っちゃった(笑)。2話のときは下級生に「キャー」って言われている凛々しさが残っているの。だけど7話くらいなるとただのバカになっちゃってね(笑)」
村:「詳しくは後で話しますけど、僕は辻打ちの回好きですね~」
池:「でも誰か反対してなかった? 辻打ちのエピソード外して野球やったほうがいいんじゃない? って」
村:「いや、巴だけは打てないとやばいでしょ。ってことで、巴がどんなに運動神経よくても成長しないからってことで必要だったんですよ」
池:「うーん、酔っぱらってきたから、悪い思い出がよみがえってきた(笑)」
村:「分かりました(笑)。じゃあまだちょっと早いですけど、一旦休憩を挟ませていただきます。その後は各話ことに深く、語り合って行きたいと思います」
(つづく)